「マンションを買うと相続税が安くなる」
これまで相続対策の王道とされてきたこの手法に、大きな転換期が訪れました。2024年(令和6年)1月から施行されたマンション相続税評価の新ルールにより、これまでのような「タワマン節税」が難しくなったと言われています。
「自分の持っているマンションの評価額はどう変わるのか?」「増税になってしまうのか?」
今回は、マンションオーナー様やこれから購入を検討されている方が知っておくべき、評価見直しのポイントを税理士が分かりやすく解説します。
目次
1. なぜ「マンション節税」は是正されたのか?
これまで、マンションの相続税評価額は時価(市場価格)の約3割〜4割程度に留まるケースが多く見られました。現金1億円を持っているよりも、1億円のマンションを持っている方が相続税を大幅に抑えられたのです。
しかし、この「時価と評価額の大きな乖離」を利用した過度な節税が、一戸建て派や現金保有派との間で不公平感を生んでいるとして、国税庁がルールの適正化に踏み切りました。これが、いわゆる「マンション節税へのメス」の正体です。
2. 新ルール「マンション建物の評価方法」はどう変わった?
これまでは「固定資産税評価額」をベースに計算していましたが、新ルールではそこに「区分所有補正率」という新しい指標を掛け合わせます。
新・評価額の計算イメージ
この補正率の導入により、相続税評価額が市場価格の最低でも60%に達するように調整される仕組みになりました。つまり、時価に対して評価が低すぎた物件ほど、ガクンと評価額が(=税金が)上がることになります。
3. あなたのマンションは影響を受ける?チェックポイント
すべてのマンションが一律に増税になるわけではありません。特に影響が大きいのは、以下のような物件です。
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高層階の住戸: 階数が高いほど、時価と固定資産税評価額の差が大きいため、補正の影響を強く受けます。
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都心部の人気エリア: 地価が高いエリアのマンションは乖離率が高くなりがちです。
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築浅の物件: 建物価値が高い時期は、新ルールの計算式において評価が上がりやすくなります。
逆に、地方のマンションや、もともと時価と評価額に差がない物件(一戸建てを含む)については、大きな影響はないケースがほとんどです。
4.【実例シミュレーション】港区・中央区のタワーマンションはどう変わる?
地価が高騰している港区や中央区のタワーマンションでは、今回の改正によって「相続税評価額が約2倍」に跳ね上がるケースも珍しくありません。具体的なモデルケースで見てみましょう。
事例:港区・湾岸エリアのタワーマンション(築5年・30階部分)
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市場価格(時価): 1億5,000万円
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従来の相続税評価額: 約4,500万円(時価の30%程度)
1. これまでの評価(2023年まで)
これまでは、固定資産税評価額をベースに計算するため、評価額は4,500万円でした。現金1億5,000万円で持っている場合に比べ、差し引き1億500万円分も「相続財産を圧縮」できていたことになります。
2. 新ルール適用後の評価(2024年〜)
新ルールでは、ここに「市場価格との乖離」を埋めるための補正率がかかります。この物件の「乖離率」を計算し、評価額が時価の60%になるよう調整されると……
新しい相続税評価額:約9,000万円(1億5,000万円 × 60%)
結果:評価額が「4,500万円」もアップ!
評価額が4,500万円上がるということは、相続税率が30%の人であれば、税負担だけで1,350万円も増える計算になります。
なぜ港区・中央区はこれほど上がるのか?
新ルールの計算式には、以下の要素が大きく関わっています。
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「総階数」と「所在階」: 階数が高いほど、また高層階であるほど乖離率が高くなります。
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「敷地持分狭小係数」: 1棟の戸数が多いタワーマンションは、1戸あたりの土地持ち分が極めて小さいため、従来のルールでは評価が低くなりすぎていたのです。
港区や中央区など都心の物件はこれらの条件に合致しやすいため、今回の「メス」による影響をダイレクトに受けてしまいます。
5. 知っておきたい「3つの注意点」
1.実質的な増税の可能性: 評価額が引き上げられるということは、算出される相続税額も増えることを意味します。
2.過去に取得した物件も対象: 「改正前に買ったから安心」ではありません。2024年1月以降に発生した相続や贈与にはすべてこの新ルールが適用されます。
3.資産価値自体は下がらない: これはあくまで「税金の計算上のルール」です。マンションそのものの資産価値や売却価格が下がるわけではないので、パニックになる必要はありません。
6. これからの相続対策:今すぐできること
ルールが変わった以上、これまでの「当たり前」を疑う必要があります。
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評価額の再シミュレーション: まずは現在の物件が新ルールでいくらになるのか、正確に把握しましょう。
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納税資金の確保: 評価額が上がって税金が増えるなら、その分をどう支払うか(現金確保や生命保険の活用など)を計画し直す必要があります。
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生前贈与の再検討: 評価額が上がる前に贈与すべきだったケースもありますが、今後は「今贈与するのが本当にお得か」をより慎重に判断しなければなりません。
7. まとめ:プロによる個別診断のススメ
マンション評価の計算式は非常に複雑で、築年数や総階数、敷地権の割合など、専門的なデータをもとに算出する必要があります。ご自身で「大丈夫だろう」と判断するのは非常に危険です。
当事務所では、最新の税制に基づいた精緻なシミュレーションを行っています。
「自分のマンションの評価額が知りたい」「今の対策のままでいいのか不安」という方は、ぜひ一度、相続専門の当事務所へご相談ください。二次相続まで見据えた、あなたに最適なプランをご提案いたします。



