「親が亡くなったけれど、うちも相続税を払う必要があるの?」 「そもそも、いくらから税金がかかるのか分からない……」
相続税は金額が大きくなりがちなため、不安を感じる方も多いでしょう。しかし、実際に相続税がかかるのは、亡くなった方全体の中で10%弱(およそ11〜12人に1人)と言われており、実は多くのケースで支払いの必要はありません。
とはいえ、平成27年の税制改正で「基礎控除」が大幅に引き下げられて以来、「都内に自宅がある」「貯蓄がそれなりにある」といったご家庭では、決して他人事ではなくなっています。
今回は、相続税の要となる「基礎控除」の計算方法から、税金を劇的に減らせる「特例」まで、税理士が分かりやすく解説します。
目次
1. 相続税の基礎控除とは?「課税のボーダーライン」
基礎控除とは、簡単に言えば「この金額までは相続税がかかりません」という非課税枠(ボーダーライン)のことです。
相続した財産の合計がこの基礎控除額に収まっていれば、相続税を支払う必要はありません。まずご自身のケースで、このラインがいくらになるのかを確認することが第一歩です。
2. 基礎控除の計算方法【2026年現在のルール】
現在の基礎控除額は、以下の数式で算出します。
具体的なシミュレーション
例えば、お父様が亡くなり、相続人が「お母様と子ども2人」の計3人の場合:
3,000万円+(600万円×3)=4,800万円
この場合、遺産総額が4,800万円以下であれば相続税は0円。税務署への申告も原則不要です。
3. 「法定相続人の数」を数える時の注意点
基礎控除を計算する際、「実際に財産をもらう人数」と「法定相続人の数」が異なる場合があります。以下のケースには注意が必要です。
① 養子がいる場合
不当な節税を防ぐため、法定相続人に含められる養子の数には制限があります。
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実子がいる場合: 養子は1人までカウント可
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実子がいない場合: 養子は2人までカウント可
② 相続放棄をした人がいる場合
「私は財産はいらない」と相続放棄をした人がいても、基礎控除の計算上は「最初から相続人であったもの」としてカウントします。放棄によって基礎控除額が減ってしまうことはありませんのでご安心ください。
4.その他の控除・特例を活用しよう
基礎控除を超えてしまった場合でも、あきらめるのはまだ早いです。相続税には、残された家族の生活を守るための「特例」や「控除」がいくつも用意されています。これらを賢く組み合わせることで、最終的な税額を大幅に抑える、あるいは「0円」にできる可能性があります。
① 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
もっとも節税効果が高いのがこの制度です。亡くなった方の配偶者が財産を相続する場合、「1億6,000万円」または「法定相続分」のいずれか多い金額までは、相続税がかかりません。 長年連れ添った配偶者の老後の生活を保障し、夫婦で築き上げた財産に重ねて課税するのは酷である、という配慮から設けられています。ただし、内縁関係の方は対象外となるため注意が必要です。
② 小規模宅地等の特例
「相続税を払うために、今住んでいる家を売らなければならない」という悲劇を防ぐための制度です。亡くなった方の自宅の土地について、一定の要件(同居していた等)を満たせば、土地の評価額を最大80%も減額できます。 例えば、時価1億円の土地でも、この特例が適用できれば「2,000万円」として計算できるため、都心に一戸建てをお持ちの方には非常にインパクトの大きい特例です。
③ 生命保険金・退職手当金の非課税枠
生命保険金や死亡退職金は、残された家族の生活立て直し資金としての性格が強いため、独自の非課税枠が設けられています。
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非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数 例えば相続人が3人なら、1,500万円までの保険金には税金がかかりません。現金をそのまま遺すよりも、生命保険という形に変えておく方が、確実に節税につながります。
④ 未成年者控除・障害者控除
これからの生活に教育費や介護費がかかる家族がいる場合、その負担を軽くするための控除です。
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未成年者控除: 18歳に達するまで、1年につき10万円を税額から差し引けます。
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障害者控除: 85歳に達するまで、1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)を差し引けます。 これらは財産額から引くのではなく、「支払うべき税金そのもの」から直接差し引けるため、非常に強力な減税効果があります。
⑤ 相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)
短い期間に相続が立て続けに起きた場合の救済措置です。10年以内に2回以上の相続(例:父が亡くなった数年後に母も亡くなった等)が発生した際、前回の相続で支払った税金の一部を、今回の税金から差し引くことができます。短期間で二重に税負担が重くなるのを防ぐための仕組みです。
【プロからのアドバイス】 これらの特例は非常に強力ですが、適用のための判定(同居要件や、二次相続まで見据えた有利・不利の判断)には専門的な知識が必要です。
まとめ
相続税は、基礎控除や特例を正しく適用できるかどうかで、支払う金額が数百万円、時には数千万円も変わってきます。
「うちは申告が必要?」「特例は使える?」と迷われたら、まずは現状を把握することが大切です。当事務所では、最新の税制に基づいた無料診断も承っております。お気軽にご相談ください。



