認知症などによって判断能力が著しく低下した場合、銀行側がその方の口座を凍結させることがあります。口座凍結の対策をしていなかった人が凍結を解除する方法はないのでしょうか。
対策をしていなかった人が凍結を解除する唯一の方法として『法定後見制度』があります。
今日は、法定後見制度について(法定後見制度とは、家族が後見人等になることは可能か、後見人等にできること・できないこと)をご紹介します。
目次
1.認知症による口座凍結を解除するには『法定後見制度』の利用が必要
口座名義人の財産を守るため判断能力が著しく低下した時に銀行側が口座凍結を行う場合があります。口座凍結に対して備えをしていない場合、この口座凍結を解除するには『法定後見制度』を利用するしかありません。
法定後見制度は成年後見制度の一種で、既に判断能力が不十分な方が利用する制度です。制度を利用することで、後見人等が口座凍結解除のほか必要な契約の締結などを代理で行ってくれます。
口座名義人の家族であっても口座凍結した口座を解除できない?
一度口座凍結されてしまうと、家族であってもその凍結を解除することはできません。銀行側に口座名義人と家族関係であることを証明する公的な書類を持って行ったとしても、お金の引出しが名義人本人に必要な経費(医療費や老人ホームの支払いなど)であると証明しても、解除することは難しいです。
法定後見制度を利用し、その後見人等が口座の管理手続きをするまでは口座凍結は解除できないのです。
2.法定後見制度とは?
法定後見制度とは
法定後見制度は、既に判断能力が低下している利用者本人の財産や権利を守るための制度です。後見人等は、利用者の不動産や財産の管理のほか、本人の身体の状態と本人の希望を考慮しながら必要な介護・医療が受けられるよう介護契約の締結や医療費の支払いなどを行います。
法定後見制度には判断能力のレベルに応じて『後見』『保佐』『補助』の3種類があります。医師の診断書によって判断能力のレベル分けがなされます。種類によって後見人等に与えられる権限が異なりますが、医師の診断書によるレベル分けによって必要な支援が受けられるよう配慮されています。
家族を後見人等にすることはできるのか?
家族が後見人等になることは可能です。しかし、制度利用者が後見人を決定する権利はなく、後見人等候補者の中から家庭裁判所が判断して選任します。ですので、家族が後見人等の候補者となっていても、家庭裁判所の判断によっては家族が選ばれない場合もあります。
では、どのような人であれば後見人等になれるのでしょうか。
後見人等になるのに特別な資格は必要ありませんが、民法によって次に該当する人は後見人等になることはできません。
<後見人等になることができない人>
・未成年者
・家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、または補助人
・破産者
・被後見人に(=制度利用者)対して訴訟をし、またはした者、並びにその配偶者、および直系血族
・行方の知れない者
後見人等には家族・親族のほか、専門職(司法書士、弁護士、社会福祉士、など)が選任されることがあります。専門職が後見人等になった場合には月々の報酬が必要です。
後見人等ができること
いずれの種類(後見・保佐・補助)の法定後見制度であっても、判断能力の低下による口座凍結を解除することは可能です。
後見人等には口座凍結の他にも与えられる権限がありますので、ご紹介します。
・後見人
与えられる権限:財産管理の代理権、取消権
※取消権とは、利用者が行った法律行為を取り消すことができる権限です
・保佐人
与えられる権限:特定の事項(借金、相続の承認、家の新築・増改築など)についての同意権、取消権
申立てにより与えられる権限:特定の法律行為についての代理権
※同意権…利用者が特定の事項の行為を行うには保佐人の同意が必要です
※取消権…利用者が保佐人の同意なく特定の事項の行為を行った場合には、取り消すことができます
・補助人
与えられる権限:なし
申立てにより与えられる権限:
①特定の事項(借金、相続の承認、家の新築・増改築など)についての同意権、取消権
②特定の法律行為についての代理権
後見人等に頼めないこと
判断能力が低下した方に心強い存在の後見人等ですが、お願いできないこともあります。
次に挙げることは後見人等の業務範囲外ですので、ホームヘルパーさんや適切な方にお願いしましょう。
・身元保証人、身元引受人、入院保証人になること
・婚姻、離婚、認知、養子縁組の代理
・本人の住居を決めること
・遺言の代理
・手術など医療行為への同意
・事実行為(食事作り、生活用品の買物、掃除、洗濯、排泄の介助、病院までの送迎、など)
まとめ
今回は、法定後見制度について(法定後見制度とは、家族が後見人等になることは可能か、後見人等にできること・できないこと)をお伝えしました。
法定後見制度は口座凍結されてしまった後でも凍結を解除できる唯一の方法です。ただ、実際に凍結解除するには制度への申込みから数ヶ月必要です。また、口座凍結を解除するためだけの短期的な利用はできませんので慎重に検討しましょう。
そうならないためにも事前の対策も大切です。
