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【認知症による口座凍結⑤】事前にできる備え 家族信託と任意後見制度の6つのちがい

認知症による口座凍結の対策として家族信託と任意後見制度があります。両者とも本人の判断能力が充分にあるうちに契約するものですが、どのようなちがいがあるのでしょうか。

今日は、家族信託と任意後見制度のちがいについてご紹介します。

 

1.そもそも家族信託と任意後見制度とは?

家族信託とは

本人の判断能力が低下する前に、預金や不動産などの信託財産の管理を家族に任せることができる契約です。財産管理は財産を守るだけでなく、積極的な運用・処分ができることが特徴です。また、本人が亡くなった時の財産の継承先を指定することや、遺言では行うことができない二次相続以降の承継先についても指定することができます。

家族信託では信託専用の信託口口座を使って家族に財産管理を任せます。信託口口座に現金を移しておくと、信託契約で定められた目的に従って家族がそのお金を使うという仕組みです。信託口口座は本人の判断能力が低下しても口座凍結されず、家族が本人の生活に必要なお金を出し入れします。

 

任意後見制度とは

本人の判断能力が低下する前に自分の意志で代理人(任意後見人)を選び、将来、判断能力が低下した時の財産管理や介護などの代理権を与える契約を結ぶ制度です。財産管理や介護などについては、契約時点での本人の希望が反映されます。本人の判断能力が低下した時に任意後見人の支援が開始するため口座凍結を防ぐことができます。

家族信託にはできない身上監護(みのうえかんご)ができることが特徴です。施設の入退所の手続きや病院の入退院の手続きなどができます。ただし、財産管理ではあくまで財産を守ることを目的としているため、積極的な運用・処分はできません。

 

2.家族信託と任意後見制度の6つのちがい

①契約する相手

家族信託:家族・親族のみ

任意後見制度:家族、親族、信頼できる友人、専門家(弁護士、司法書士、など)

契約する相手は財産管理をしてくれる人のことです。家族信託では“受託者”、任意後見制度では“任意後見人”と呼びます。

 

②受託者・任意後見人への報酬

家族信託:原則なし

任意後見制度:家族・親族・友人は0~5万円/月、専門家(弁護士、司法書士、など)は2~6万円/月

財産管理をお願いする人(受託者・任意後見人)が本人の身内や友人の場合、無報酬でお願いすることが多いです。しかし、任意後見制度で専門家へ財産管理などをお願いしたい場合は報酬が必要です。また、任意後見制度では任意後見人の監督をする“任意後見監督人”への報酬も必要です。任意後見監督が専門家の場合、1~3万円/月です。任意後見制度による支援は本人が亡くなるまでずっと続き、途中で支援を止めることは基本的にできません。つまり、支援が始まると毎月の報酬支払が亡くなるまで続きます。そのため、資金を準備しておく必要があります。

 

③支援開始の時期

家族信託:信託契約を締結した時

任意後見制度:将来、判断能力が低下し、家族などの申立により後見監督人が選任された時

家族信託の場合、本人の判断能力が充分にあり元気なうちから支援をスタートさせることができます。そのため、財産のことは家族に任せてゆっくりと老後を楽しむために利用を考える方もいらっしゃいます。

一方、任意後見制度は、将来、判断能力が低下した時に支援が始まります。万が一のことを考えて制度の契約をしていても、判断能力を充分に保ったまま亡くなり、支援を受けることがなかったという場合もあります。

 

④財産の運用・投資ができるか

家族信託:できる

任意後見制度:できない

任意後見制度の目的はあくまで本人の財産・権利を“守るため”です。そのため、財産を増やす目的で行う運用・投資であっても、少しでも財産が減ってしまう可能性があるものは認められません。家族信託は任意後見制度より契約内容の自由度が高いので、不動産の活用や株式投資、資産の組み換えができます。

 

⑤身上監護(みのうえかんご)ができるか

家族信託:できない

任意後見制度:できる

身上監護(みのうえかんご)とは、本人の生活を維持するための治療・療養・介護などに関する手続きを行うことです。例えば、施設の入退所の手続き、病院の入退院の手続き、リハビリの手続き、介護保険の手続き、などです。任意後見制度を利用しなくても家族であれば手続きはできますが、遠方に住んでいたりすると手続きのたびに来てもらわなければなりません。

 

⑥家族以外の関与の有無

家族信託:なし

任意後見制度:あり

家族信託では本人や家族が望まない限り、契約後の財産管理に第三者(専門家、裁判所、など)が関わることはありません。

一方、任意後見制度では裁判所や専門家(弁護士、司法書士、など)が関わってきます。どのような時に関わりがあるかと言うと、任意後見人を監督する任意後見監督人に専門家が選ばれた時です。また、任意後見人を家族にした場合、財産の管理状況を裁判所や任意後見監督人へ定期的に提出する必要があるため関わりがあります。

 

まとめ

今日は、家族信託と任意後見制度のちがいについてお伝えしました。

家族信託と任意後見制度は支援内容や報酬などに大きなちがいがあります。まずは、どのようなちがいがあるかを理解してから自分の希望を考えてみましょう。

 

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