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【認知症による口座凍結③】口座凍結の解除後も支援は一生続く 法定後見制度について

認知症による口座凍結解除のための方法として『法定後見制度』をご紹介してきましたが、法定後見制度は口座凍結を解除すれば利用を終了できるものではありません。判断能力が低下した方の財産と権利を守るために支援は一生続きます。

今日は、法定後見制度のメリット・デメリット、申込方法、法定後見制度の相談先、についてご紹介します。法定後見制度のメリットやデメリットを十分に理解した上で制度の利用を検討しましょう。

 

1.法定後見制度のメリット・デメリット

メリット

後見人等が本人の預貯金・不動産の管理ができる

口座凍結の解除はもちろん、本人の預貯金を必要な分だけ引出したり、支払いのために振込を行うことができます。また、不動産の売却や登記を行うこともできます。

 

本人が行った不必要な契約を取消すことができる

複数の新聞社との購読契約、リフォーム詐欺と思われる契約、訪問売買業者によって貴金属を不当に安く買取られた、など本人が行った契約でも不必要であれば後見人等が取消すことができます。

 

親族によるお金の使いこみを防ぐことができる

法定後見制度の利用が始まると後見人等以外の人は預貯金の管理ができなくなります。また、後見人等に対しても財産の管理状況を報告する義務があるので、親族・後見人等によるお金の使いこみを防止することができます。

 

デメリット

本人のため以外の出費は認められない

法定後見制度はあくまで本人の財産・権利を守るための制度です。制度の利用が始まると、孫への入学祝金や家族の旅行代など本人以外のための出費はできなくなります。

 

後見人への報酬が必要

専門職(弁護士、司法書士、行政書士、など)が後見人等に選ばれた場合、報酬を支払わなければなりません。報酬は管理する財産の金額に応じて家庭裁判所が決めます。ちなみに、管理財産額1000万円未満では月2万円程度の報酬が必要です。

 

一度制度を利用すると本人が亡くなるまで続く

制度の利用が始まると、基本的には本人が亡くなるまで利用が続きます。家族が後見人に選ばれなかったので制度の利用を辞めたい、口座凍結が解除できたので利用を辞めたい、というのは認められません。

また、後見人への報酬も本人が亡くなるまで続きます。

 

申立に時間と費用がかかる

申立から制度利用開始までには約4ヶ月かかります。また、申立自体の費用はあまりかかりませんが、精神鑑定が必要になった場合や専門職に申立依頼する場合は高額になります。

 

相続税対策ができなくなる

法定後見制度はあくまで本人の財産・権利を守るための制度であることから、残される家族のための相続税対策はできなくなります。

 

2.法定後見制度の申込方法

申立先・申立ができる人

申立先:利用者本人の住所地の家庭裁判所

申立ができる人:本人、配偶者、4等親以内の親族、市町村長

 

申立に必要なもの

①申立書、申立書付表(家庭裁判所でもらえます)

②本人の戸籍謄本(全部事項証明書)

③本人の住民票(または、戸籍附表)

④診断書(家庭裁判所が定める様式のもの)

⑤本人の登記されていないことの証明書(本人が成年被後見人や被保佐人などに該当しないことの証明)

⑥本人の財産に関する資料

⑦後見人候補者の住民票(または、戸籍附表)

 

費用

①申立手数料(収入印紙)800円

②登記手数料(収入印紙)2600円

③連絡用の郵便切手(家庭裁判所に要確認)

④鑑定料(医師による精神鑑定。必要がある場合のみ実施。5~10万円)

(⑤専門職へ申立の書類作成・届出を依頼した場合、報酬として数十万円が必要です)

市町村によっては法定成年制度を利用する際に必要な経費を助成してもらえる場合があります。また、経済面でお困りの方は日本司法支援センター(通称:法テラス)が行う民事法律扶助による援助が受けられる場合もあります。詳しくは市町村の窓口や法テラスにお問い合わせください。

 

申立の流れ

①家庭裁判所へ申立をする

 

②家庭裁判所による審理

家庭裁判所が申立人・本人・後見人等候補者や申立書類などについて調査を行います。必要であれば本人の精神鑑定が行われます。

 

③家庭裁判所による審判

審理で調査した内容をもとに制度の利用を開始して良いか家庭裁判所が判断します。制度の利用を認める場合には、後見人等の選任も行います(本人に後見人等の指名権はありません)。なお、後見人等の選任理由は公開されません。

 

④審判確定

 

⑤制度の利用が始まる

家庭裁判所が審判した内容にもとづいて後見人等による支援が開始されます。同時に、後見人等への報酬の支払いも開始します。

 

3.法定後見制度の利用を相談したい時は…

法定後見制度について相談がしたい時は、次の場所で相談することができます。申立の仕方など個人だけで進めるのは不安なことも多いと思いますので、遠慮せずに相談しましょう。

・市区町村の高齢者福祉課

・社会福祉協議会

・地域包括センター

・家庭裁判所

・成年後見を業務とするNPO法人など

 

まとめ

今日は、法定後見制度のメリット・デメリット、申込方法、法定後見制度の相談先、についてお伝えしました。

法定後見制度は認知症による口座凍結への備えをしていなかった方でも使える有効な手段です。しかし、本人に後見人等の指名権がない点を考えると任意後見制度より自由度は低くなります。親・自分はまだ大丈夫、と過信せずしっかりと口座凍結の備えをしておきましょう。

 

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