平成30年度(2018年度)相続税・贈与税の税制改正のポイント

平成30年度(2018年度)税制改正法と,政省令・関係告示が3月31日に公布されました。 相続税・贈与税に関しては、事業承継税制の特例の創設や相続税節税スキームを防ぐための一般社団 … 続きを読む 平成30年度(2018年度)相続税・贈与税の税制改正のポイント

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平成30年度(2018年度)税制改正法と,政省令・関係告示が3月31日に公布されました。
相続税・贈与税に関しては、事業承継税制の特例の創設や相続税節税スキームを防ぐための一般社団法人等に関する相続税や贈与税の見直し、小規模宅地等の特例の見直しなどの改正が行われました。今回は相続税・贈与税の税制改正のポイントを税理士が解説します。

1.事業承継税制の特例の創設

事業承継税制について、従来の措置に加えて、次のような特例が、10年間の時限措置(特例措置)として設けられました。なお、特例措置を適用する場合は、5年以内に特例承継計画を提出する必要があります。

(特例措置の主な内容)
①従来は総株式数の最大3分の2までであった納税猶予の対象となる非上場株式等の対象株数の制限が撤廃されました。
②相続時の納税猶予割合が100%へ引上げられました。
③複数の株主から最大3人の後継者へ承継する場合も適用できることとなりました。など

この特例措置は、2018年1月1日から2027年12月31日までの間の非上場株式等の贈与・相続等である場合に適用することができます。

(関連記事)事業承継税制の特例措置ってどんな制度?

 

2.一般社団法人等に関する相続税や贈与税の見直し

①個人が一般社団法人等に対して財産の贈与・遺贈等をした場合、一定の要件(贈与税等の負担が不当に減少する結果とならないものとされる要件)のうちいずれかを満たさない場合に贈与税等が課税されることが明確化されました。

②同族関係者が理事の過半を占めている一般社団法人や一般財団法人(特定一般社団法人等)において、その同族理事の一人が死亡した場合、その法人の財産を対象として、当該特定一般社団法人に対して相続税が課税されることとされました。これにより、出資持分がない一般社団法人を利用した相続税節税スキームに一定の制限がかかることとなりました。

①、②のいずれについても2018年4月1日以後の相続から適用となります。ただし、②に関して、同日前に設立された一般社団法人等については、2021年4月1日以後の当該一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税から適用されます。

(関連記事)2018年度(平成30年度)税制改正 一般社団法人等に係る相続税等の改正

 

3.小規模宅地等の特例について見直し

①持ち家に居住していない者(いわゆる「家なき子」)に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、相続開始前3年以内に3親等内の親族等が所有する国内にある家屋に居住したことがある者、相続開始時に居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者が除外されることとなりました。

②貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等が除外されました。ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている場合はこが貸付事業の用に供している場合は、引き続き、貸付事業用宅地等の範囲に含まれます。

③介護医療院に入所したために被相続人の居住用ではなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等について、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして小規模宅地等の特例が適用できることとされました。

小規模宅地等の特例についての見直しは、いずれも平成30年4月1日以後の相続等により取得する財産に係る相続税から適用されます。ただし、②については、平成30年4月1日前貸付事業の用に供されていた宅地等については適用されません。

(関連記事)2018年度(平成30年度)税制改正 小規模宅地等の特例の見直し

 

4.外国人の出国後の相続税等の納税義務の見直し

高度外国人材等の受入れと長期滞在を更に促進する観点から、日本国籍及び国内に住所がない被相続人又は贈与者が、国内に住所を有しないこととなった時前15年以内において、国内に住所を有していた期間の合計が10年超であっても、日本国籍及び国内に住所がない者に対して国外財産の相続・贈与等をした場合には、相続税または贈与税が課税されないこととされました。
ただし、贈与者が国内に住所を有しなくなった日から2年を経過する日までに、国外財産の贈与をした場合で、同日までに再度、国内に住所を有することとなったときは、贈与税が課税されます。
この改正は、2018年4月1日以後の相続・贈与等より適用されます。

 

まとめ

相続税・贈与税は大きな税制改正が行われました。特に事業承継税制は、今後10年間での事業承継を押し進めるための抜本的な改正が行われています。使いやすくなっていますので、事業承継をお考えの方は、改正内容を把握した上で検討されてはどうでしょうか。わからないときはみんなの相続相談・大阪までお気軽にご相談ください。