相続税にも関係している固定資産税とは?計算方法を解説

もし土地や建物を相続によって取得したら、毎年固定資産税を支払っていかなくてはなりません。相続後のことに関係してくる固定資産税ですが、実は相続税にもかかわりがあります。相続税のどのよ … 続きを読む 相続税にも関係している固定資産税とは?計算方法を解説

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もし土地や建物を相続によって取得したら、毎年固定資産税を支払っていかなくてはなりません。相続後のことに関係してくる固定資産税ですが、実は相続税にもかかわりがあります。相続税のどのような部分に関連してくるものなのか、固定資産税と固定資産税評価額について詳しくみていきましょう。

 

相続税に関わる固定資産税とはなにか

固定資産税とは、土地や家屋の他、船舶や製造用機械などの償却資産(償却資産は事業に使用するもの)の資産を所有する人に課せられる税金です。地方税に分類され、市町村など地方自治体に対して納めます。

固定資産税の対象は、土地や家屋の所有者です。所有者かどうかは登記簿に登記、あるいは市町村の課税台帳に登録されているかが判断基準となります。相続時、不安な場合は登記簿謄本や固定資産税の課税台帳を一度確認されることをおすすめします。

なお、固定資産税の基準日は1月1日です。基準日に所有している人に対して固定資産税は課せられるので注意しましょう。

また、所有者が亡くなった場合は、亡くなった年の固定資産税は相続人が、以降は相続登記完了まで相続人全員が負うこととなります。土地や家屋などの相続があれば支払わなければならなくなるので、資金の準備など頭の隅に入れておくと安心です。

固定資産税の計算方法

固定資産税は、土地と家屋を評価したうえで、その評価額に一定の税率をかけて計算されます。購入した価格がそのまま反映される訳ではありません。土地も建物も、その当時の評価が考慮されます。

以下が、固定資産税の計算の方法です。

固定資産税評価額 × 標準税率 = 固定資産税

標準税率は通常1.4%ですが、地方自治体で変更してもよい税率であるため、地方によっては少し異なる場合があります。

(例)固定資産税評価額が1,000万円、標準税率1.4%の場合
1,000万円 × 1.4% = 14万円

単純に計算した場合、上記のようになりますが、固定資産税の計算には小規模住宅用地の軽減などの特例もあるので、実際には特例も考慮したうえでの計算が必要です。

 

相続税に関わる固定資産税評価額とはなにか

固定資産税の計算方法で説明したように、固定資産税の計算では固定資産税評価額が必要です。この固定資産税評価額は、国の固定資産評価基準をもとに市区町村が決定するもので、3年に1度評価替えがされています。

固定資産税評価額はどのくらい?

市区町村によって多少異なりますが、固定資産税評価額は土地であれば時価の70%、建物であれば新築時の建設費50~70%程度が目安です。時価や建設費がまるまる評価されることは、まずないと考えてよいでしょう。

また、固定資産税評価額には減免の特例もあるため、実際には思ったよりも低い価格が評価額になることも少なくありません。なかでも軽減制度として知っておきたいのが、住宅用地に関する特例です。

住宅用地とは、居住用の住宅の敷地と一体の庭や駐車場など一定の範囲内の土地のことで、1戸につき200㎡までの小規模住宅用地については評価額が6分の1に、それ以外の住宅用地は評価額が3分の1に減額されます。

ちなみに小規模住宅用地の特例は相続税にもありますが、割合などが変わってくるので混同しないようにしましょう。

固定資産税評価額が使われる場面

固定資産税評価額は、固定資産税の計算で使うものだと解説しましたが、他の税金の計算でも使われることがあります。都市計画税指定地における都市計画税、不動産売買や贈与にかかわる不動産取得税、所有者の移転にかかわる登録免許税です。

さらに、建物の相続税評価額を計算する場合にも固定資産税評価額は使われます。建物に関しては相続税評価額と固定資産税評価額は同一です。土地やマンションに関しては、概算として使用することができます。

 

相続税に関わる固定資産税評価額の算出方法とは

固定資産税の評価額は土地と建物で異なります。それぞれの算出方法を確認してみましょう。なお、建物の固定資産税評価額に関しては相続税と同様なので、相続時の目安にできます。

土地の場合

土地の固定資産税評価額は、時価のだいたい70%くらいであると言われています。具体的な計算の方法としては、路線価方式と標準宅地比準方式があり、市町村の公開している固定資産税路線価図などを用いて計算します。

まず土地の評価を左右するのが、宅地や畑など対象の土地がどのように使われているかです。次に確認したいのが、対象の土地が市街地を形成するような市街化区域に含まれているかどうか。市街地にあたるか否かで評価の方法が変わってきます。

(市街化区域の場合)
固定資産税路線価 × 面積 × 評点

市街化区域に含まれる場合は、固定資産税路線価図を使用した計算が必要です。路線価図は、通常なら役所で手に入れることができます。東京都など一部の地方自治体についてはインターネット上で確認が可能です。役所に問い合わせる前に、ホームページ上で探してみるのもよいでしょう

なお、実際の計算は路線価に土地の面積、どのくらい道路に土地が面しているか、形はいびつでないかなどの評点で決定されます。

市街地にあるような土地ばかりならよいですが、実際にはあまり建物がないような場所にも土地を持っているケースがあるはずです。市街化区域でない地域の場合は、標準宅地比準方式といって、近くの標準宅地の価格をもとに評価額が決まることがあります。

建物の場合

建物の場合は、建築費の50~70%程度が目安です。計算は個別で行なわれるため一概にはいえませんが、以下のように計算します。

再建築の費用 - 経年減価分 = 建物の固定資産税評価額

再建築の費用は、建物に使用されている屋根や壁など素材や面積ごとに評価し、経年分の原価は一定の率に応じて計算するしくみです。つまり、年数がたつほど建物の評価額は低くなっていく傾向にあることがわかります。

このように、土地の場合も建物の場合であっても評価額は抑え目です。特に土地に関して時価より評価額が抑えられているのは、価格の変動を考慮しているため。固定資産税評価額は毎年ではなく3年に1度の更新となるため、3年の間にある程度変動があってもよいように、時価いっぱいでは評価されていません。

 

固定資産税評価額と相続税評価額はなにが違うのか

固定資産税評価額は、固定資産税などの計算に使われる評価だと解説しました。相続税評価額は、相続や遺贈、または贈与で取得した財産の計算に使う評価額で、まず固定資産税評価額と相続税評価額とでは、使われる場面が異なります。

また、もう1つ固定資産税評価額と相続税評価額との違いを生み出しているのが算出方法の違いです。相続税の家屋の評価は、固定資産税評価額の1.0倍であるため相続税評価額が同じですが、土地の算出方法が固定資産税評価額と相続税評価額とでは異なります。

相続税評価額の土地の算出方法は2つ

相続税評価額の土地の算出方法には、路線価方式と倍率方式があります。路線価方式は、相続税路線価を使用した方法で、倍率方式は固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率を乗じて計算する方法です。

路線価方式と相続税評価額

路線価図のある地域や価格表記のある路線に面している土地に関しては、路線価方式によって計算します。

例えば、土地が面している路線に120Dという表記があった場合、1㎡あたり12万円で評価するということです。実際には、土地の形なども考慮されて減額されることもありますが、面積×路線価で評価額を算出します。

(例)土地100㎡で路線価12万円の場合(減額や借地権は考慮しないものとする)
100㎡ × 12万円 = 1,200万円(土地の相続税評価額)

路線価方式では、相続税評価額と同様に路線価図を使用しますが、相続税評価額を求める場合は、市町村で提供している固定資産税評価額の路線図とは異なります。国税庁の公表している路線価図を使用する点に注意しましょう。なお、国税庁の路線価図はインターネット上で確認できます。

倍率方式と相続税評価額

倍率方式は、路線価図で確認できない地域や土地に関しての評価方法です。同じく国税庁で公開されている地域ごとの評価倍率表を使って計算します。

このように、相続税評価額と固定資産税評価額は建物の評価に関しては同じですが、土地の評価の計算が別です。土地の相続税評価額は時価のだいたい80%程度で、固定資産税評価額の割合よりも少し高く評価されます。

 

まとめ

固定資産税の固定資産税評価額と相続税の相続税評価額は、使用の目的は違いますが、密接に関係してきます。建物の場合は固定資産税評価額がそのまま参考になりますし、土地であれば目安にすることができるので、相続時に確認してみるのもよいでしょう。

ただし、相続税の相続税評価額の計算は減額や借地権など考慮しなければならない部分もあるため少々複雑です。

相続税に不安がある場合や計算が複雑で難しい場合は、みんなの相続相談・大阪へぜひご相談ください。