相続した不動産を売却したときの税金 取得費加算の特例とは?

土地や建物などの不動産を売却し、利益(譲渡所得)が出たときは所得税がかかります。 相続した土地や建物についても同様ですが、相続で取得した場合は特例が設けられています。今回はその特例 … 続きを読む 相続した不動産を売却したときの税金 取得費加算の特例とは?

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土地や建物などの不動産を売却し、利益(譲渡所得)が出たときは所得税がかかります。
相続した土地や建物についても同様ですが、相続で取得した場合は特例が設けられています。今回はその特例のうち、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例について解説します。

1.相続した不動産を売却したとき

相続した土地や建物などの不動産を売却し、利益(譲渡所得)が出たときは原則として所得税がかかります。このときの譲渡所得は、不動産の売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費とは、不動産の購入代金、建築代金、仲介手数料などをいいますが、建物の場合は、購入代金等から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。
なお、取得費が不明な時などは、売却代金の5%を取得費とすることが認められています。

相続した不動産についても基本的には同様で、取得費は相続人などが当初に取得したときの購入代金や建築代金等を基礎として考えることとなります。ただし、相続した不動産等を一定期間内に譲渡した場合は、相続時に支払った相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算することができる、という特例が設けられています(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)。取得費が加算されるということは、譲渡所得が少なくなるということですので、その分の所得税が少なくなります。

2.相続財産を譲渡した場合の取得費の特例とは?

この特例を適用すると、相続により取得した土地、建物、株式などを、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。相続税額を加算するので、その財産を取得した人に相続税が課税されていることが要件となります。

取得費に加算する相続税額は、次の計算式で計算した金額となります。

その者の相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価額/(その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額)=取得費に加算する相続税額

次の事例で見ていきましょう。
(事例)
長男(Aさん)が不動産5,000万円、預貯金8,600万円の合計1億3,600万円の財産を相続(債務控除額はゼロ)し、2,300万円の相続税を支払った。相続で取得した不動産5,000万円を売却。

Aさんの相続税額:2,300万円×譲渡した財産の価額5,000万円/相続税課税価格13,600万円=取得費に加算する相続税額:845万円

上記の計算式のとおり、取得費に加算する相続税額は845万円となります。

なお、この特例を受けるために確定申告をする必要があります。
その際には、次の書類を添付することが必要です。
①相続税の申告書の写し(第1表、第11表、第11の2表、第14表、第15表)
②相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
③譲渡所得の内訳書や株式等に係る譲渡所得等の計算明細書

3.まとめ

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例について解説しました。この特例をすることにより、不動産を売却した際の所得税は少なくなりますが、相続開始後一定期間以内に売却しなければならない、などの要件が設けられているので、注意が必要です。わからないときは早めに税理士に相談するとよいでしょう。